史上最もDISられたラッパー 〜MC HAMMER RAP WARZ〜
かつてこれほどまでにフルボッコにされ、
そしてそれが忘れられきっているラッパーがいるだろうか。
MC HAMMER RAP WARZ。

ラップの歴史には伝説的なBEEFが数多く存在します。行き過ぎた抗争は時としてギャングやマフィアを巻き込み、カリスマの死という悲劇をも招きました。ビギーと2Pac、NasとJay-Z、EminemとJa Rule、BDPとJuice Crew。これらはもはやラップ史のみならず、音楽史に残る事件とすら言われています。
しかしその一方で、90年代初頭に発生していた、伝説とは全く無縁のBEEFがありました。そう、彼です。
だっせえ!!
はい出ました、MCハマーです。このジャケはいつ見ても最高ですね。この辺が彼の憎めないところです。1990年に発表されたアルバム「Please Hammer Don’t Hurt’Em」の売り上げ枚数はなんと1000万枚。これは、ラップアルバムとしては、1986年に発表されたビースティ・ボーイズのライセンス・トゥ・イルの売り上げ枚数を4年ぶりに更新したことになります。しかるに彼を、初めて世界を相手に、前例のないレベルのポピュラリティを獲得した“黒人”ラッパーと呼ぶことには、少なくとも数字を見る限り、誰も異議はないことでしょう。
そうした意味で、彼は間違いなくヒップホップ史における功労者であり、ヒップホップをさらに一段階押し上げたという意味においては、2パックやビギー並の重要人物であるにもかかわらず、誰もあの曲以外の印象がありません。
それじゃあんまりだ!リメンバーハマー!!というわけで今回は、MCハマーのBEEFを取り上げていこうと思います。東西抗争やブリッジ戦争なんかはたまに話題になりますが、ハマーのBEEFはまず話題に上りません。それどころか少し前は、MCハマーの話題はヒップホップ好きの間で確実に黙殺されてる感すらありました。
当時、かなりの人たちからDISを一手に受けていたMCハマー。LL Cool JにIce Cube、A Tribe Called Quest・・・。果たして、こんなメンツとBEEFを繰り広げることができた人間がかつて一人でもいただろうか?いや、彼をおいて他にいません。なのに誰も覚えていない。まずは、対岸の火事を見る気持ちで、どんなDISを浴びせられたのか振り返ってみましょう。
この「一緒に踊るにはふさわしくないブラザー」というラインは、どうやら当時MCハマーがフックアップしていたToo Big MCを指しているという説が有力なのですが、いよいよ誰も知らないでしょう。この曲の4:03あたりから登場するから、暇でどうしようもない人は見てみましょう。ちなみにこの曲を発表した当時のLL Cool Jはハマーの6歳年下。
当時ハマーはペプシコーラのCMに出演しており、その時の決め台詞が「Pepsi,Proper.」だったそう。それをQ-Tipに揶揄されています。このペプシコーラのCM自体も、言ってみればコカコーラへのDISなのですが、この演出もまた「DISは売れてない側が絶対有利」ということを図らずも証明してしまっているあたり、なんとも複雑です。菅原文太のいう「狙われるもんより狙うもんの方が強いんじゃ」ってやつですね。
Ice Cubeはシンプルに暴力的。この後、「坊や、間違っても俺をダウボーイなんて呼ぶなよ。これは映画の中の話じゃねえからな」と続きます。 ダウボーイはIce Cubeが映画「Boyz n the Hood」の中で演じた役名。ここから先はサクサクいきましょう。
と、何気にVanilla Iceにまで噛み付かれていたハマー。ただ、Vanilla Iceも相当標的にされてたので、矛先をどうにかハマーに向けようとしてるように見えなくもない。他にもすごくたくさんありますが、あとは各自調べてみましょう。
アンクル・トム扱いされ、ラッパーというラッパーたちからフルボッコにされたMCハマー。ハマーは深く傷ついたに違いありません。しかし泣いてはいられません。この悲しみをばねに、MCハマーはついに生まれ変わるのです。
ハードコアラッパー、Hammerとして。
その路線転向後のアルバムのジャケットがこちら。
お前、ハンドル切るの急すぎるだろ!!
やりすぎちゃったねハマー。そういうところがかわいいよハマー。しかしこの路線変更後も結局コアなリスナーには受け入れられなかったばかりか、路線変更についてこられなかった一般のファンをも逃がしてしまい、やっぱりDISられまくるハマー。豪邸の維持費に貯金はみるみる減っていき、自身の経営する芸能事務所も倒産、3年後、94年に起死回生とリリースしたアルバムの際は迷走の末なんとギャングスタラッパーっぽくなって反撃。
そしてあまり知られていない事実ですが、実はなんとハマーは95年にデス・ロウレーベル入りを果たしています。残念ながらデス・ロウからのリリースはなかったものの、2Pacと一緒にレコーディングまでしていたのです。ハマーに歴史あり。
結局90年代初頭をピークに下降線をたどるも、かつての勢いを取り戻すことはできず、音楽シーンの表舞台からは姿を消すことに。BEEFは命がけの闘争だ!とはいえ、ここまで売れて、ここまで蹴落とされた例は彼が後にも先にも初めてでしょう。そんなハマーのその後に関する気になるトピックを紹介しましょう。数年前になぜか突如、
検索エンジンの開発に手を出しました。(現在閉鎖中)
目が離せないハマーの動向。今後とも、暖かく見守っていきたいものです。
「ハマーの破産は周知の事実で、ネタにしたのは俺が初めてじゃないし、悪口ではない。
発表したばかりの俺の本“Decoded”の中ではハマーを賞賛している」
ハマーお前、あいつの本の宣伝に利用されただけじゃないか!!
さすがビジネスマンJay-Z。そしてさすがロケットブースター・ハマー。力の入ったアンサーソングを軽くいなされたハマーは1週間後、そっと終結宣言を出しました。

だっせえ!!
はい出ました、MCハマーです。このジャケはいつ見ても最高ですね。この辺が彼の憎めないところです。1990年に発表されたアルバム「Please Hammer Don’t Hurt’Em」の売り上げ枚数はなんと1000万枚。これは、ラップアルバムとしては、1986年に発表されたビースティ・ボーイズのライセンス・トゥ・イルの売り上げ枚数を4年ぶりに更新したことになります。しかるに彼を、初めて世界を相手に、前例のないレベルのポピュラリティを獲得した“黒人”ラッパーと呼ぶことには、少なくとも数字を見る限り、誰も異議はないことでしょう。
そうした意味で、彼は間違いなくヒップホップ史における功労者であり、ヒップホップをさらに一段階押し上げたという意味においては、2パックやビギー並の重要人物であるにもかかわらず、誰もあの曲以外の印象がありません。
↑あの曲
それじゃあんまりだ!リメンバーハマー!!というわけで今回は、MCハマーのBEEFを取り上げていこうと思います。東西抗争やブリッジ戦争なんかはたまに話題になりますが、ハマーのBEEFはまず話題に上りません。それどころか少し前は、MCハマーの話題はヒップホップ好きの間で確実に黙殺されてる感すらありました。
当時、かなりの人たちからDISを一手に受けていたMCハマー。LL Cool JにIce Cube、A Tribe Called Quest・・・。果たして、こんなメンツとBEEFを繰り広げることができた人間がかつて一人でもいただろうか?いや、彼をおいて他にいません。なのに誰も覚えていない。まずは、対岸の火事を見る気持ちで、どんなDISを浴びせられたのか振り返ってみましょう。
アマチュアは死体袋からハンマー(=Hammer)を振り回してる(=swingin)
俺は一緒に踊るにはふさわしくないブラザーだ
なぜなら俺にはswingする相棒なんか必要ないからさ
That amateur swingin a hammer from a body bag,
But I’m the wrong brother to dance with.
Cause I don’t need a partner to swing
ー LL Cool J 『To Da Break of Dawn』(1990)
俺は一緒に踊るにはふさわしくないブラザーだ
なぜなら俺にはswingする相棒なんか必要ないからさ
That amateur swingin a hammer from a body bag,
But I’m the wrong brother to dance with.
Cause I don’t need a partner to swing
ー LL Cool J 『To Da Break of Dawn』(1990)
この「一緒に踊るにはふさわしくないブラザー」というラインは、どうやら当時MCハマーがフックアップしていたToo Big MCを指しているという説が有力なのですが、いよいよ誰も知らないでしょう。この曲の4:03あたりから登場するから、暇でどうしようもない人は見てみましょう。ちなみにこの曲を発表した当時のLL Cool Jはハマーの6歳年下。
“本物”だと?ハマー、何を言っているんだ?
本物のラップはポップじゃない。そいつを止めろ。
“Proper”? What you say Hammer?
Proper rap is not pop .If you call it that then stop.
ー A Tribe Called Quest 『Check the Rhime』(1991)
本物のラップはポップじゃない。そいつを止めろ。
“Proper”? What you say Hammer?
Proper rap is not pop .If you call it that then stop.
ー A Tribe Called Quest 『Check the Rhime』(1991)
当時ハマーはペプシコーラのCMに出演しており、その時の決め台詞が「Pepsi,Proper.」だったそう。それをQ-Tipに揶揄されています。このペプシコーラのCM自体も、言ってみればコカコーラへのDISなのですが、この演出もまた「DISは売れてない側が絶対有利」ということを図らずも証明してしまっているあたり、なんとも複雑です。菅原文太のいう「狙われるもんより狙うもんの方が強いんじゃ」ってやつですね。
俺はお前を切り刻み、ヘッドバットを食らわす
お前は”You Can’t Touch This”なんてほざいてるが、
俺がお前なんかに触るかよ、マザーファッカー
I’ll cut you, head-butt you
You say you can’t touch this, and I wouldn’t touch ya, punk mothafucka
ー Ice Cube 『Check Yo Self』(1993)
お前は”You Can’t Touch This”なんてほざいてるが、
俺がお前なんかに触るかよ、マザーファッカー
I’ll cut you, head-butt you
You say you can’t touch this, and I wouldn’t touch ya, punk mothafucka
ー Ice Cube 『Check Yo Self』(1993)
Ice Cubeはシンプルに暴力的。この後、「坊や、間違っても俺をダウボーイなんて呼ぶなよ。これは映画の中の話じゃねえからな」と続きます。 ダウボーイはIce Cubeが映画「Boyz n the Hood」の中で演じた役名。ここから先はサクサクいきましょう。
DJ SubrocにはGas Faceはしない
KMDにもGas Faceはしない
ハマー、口を閉じろ!AHUAHAUAH!
No Gas Face for DJ Subroc
No Gas Face for KMD
Hammer, shut the fuck up! Gas Face! AHUAHAUAH!
ー 3rd Bass 『Gas Face』(1989)
※Gas Face:アメリカで用いられる、嫌いな人に憎しみと嘲笑を込めて作る表情。
日本で言う「あっかんべー」的なヤツ。
KMDにもGas Faceはしない
ハマー、口を閉じろ!AHUAHAUAH!
No Gas Face for DJ Subroc
No Gas Face for KMD
Hammer, shut the fuck up! Gas Face! AHUAHAUAH!
ー 3rd Bass 『Gas Face』(1989)
※Gas Face:アメリカで用いられる、嫌いな人に憎しみと嘲笑を込めて作る表情。
日本で言う「あっかんべー」的なヤツ。
投票して、その結果を記録してみようぜ
それで金槌(=Hammer)がただの木槌だってはっきりさせよう
Let’s have a vote and try to register our ballots
And realize a hammer’s just a mallet
ー Del Tha Funky Homosapien 『Pissin On Your Steps』(1991)
それで金槌(=Hammer)がただの木槌だってはっきりさせよう
Let’s have a vote and try to register our ballots
And realize a hammer’s just a mallet
ー Del Tha Funky Homosapien 『Pissin On Your Steps』(1991)
好むと好まざるとに関わらず、MCハマーなんかどうでもいい
だけどあいつがもし俺と刑務所にいたら、
あいつは俺のビッチになりさがってるだろうぜ
Like it or not, I don’t care about the Hammer
But he’d be my bitch if me and him was in the slammer
ー MC Serch 『Daze In A Weak』
だけどあいつがもし俺と刑務所にいたら、
あいつは俺のビッチになりさがってるだろうぜ
Like it or not, I don’t care about the Hammer
But he’d be my bitch if me and him was in the slammer
ー MC Serch 『Daze In A Weak』
辞書の「セルアウト」の項目にはお前が載るだろう
In the dictionary under “sellout” that’s where you’ll be
ー Black Sheep 『H.A.A.』
In the dictionary under “sellout” that’s where you’ll be
ー Black Sheep 『H.A.A.』
お前とスラムダンスを踊りたいぜ、ハマー
お前はもうすぐ燃え尽きてクビになるだろう
I wanna slam dance with ya, Hammer.
Now can I kick it, of course I can.
yo, you will get burned out, then turned out.
ー Vanilla Ice 『Hit ‘Em Hard』(1994)
お前はもうすぐ燃え尽きてクビになるだろう
I wanna slam dance with ya, Hammer.
Now can I kick it, of course I can.
yo, you will get burned out, then turned out.
ー Vanilla Ice 『Hit ‘Em Hard』(1994)
と、何気にVanilla Iceにまで噛み付かれていたハマー。ただ、Vanilla Iceも相当標的にされてたので、矛先をどうにかハマーに向けようとしてるように見えなくもない。他にもすごくたくさんありますが、あとは各自調べてみましょう。
アンクル・トム扱いされ、ラッパーというラッパーたちからフルボッコにされたMCハマー。ハマーは深く傷ついたに違いありません。しかし泣いてはいられません。この悲しみをばねに、MCハマーはついに生まれ変わるのです。
ハードコアラッパー、Hammerとして。
その路線転向後のアルバムのジャケットがこちら。

お前、ハンドル切るの急すぎるだろ!!
やりすぎちゃったねハマー。そういうところがかわいいよハマー。しかしこの路線変更後も結局コアなリスナーには受け入れられなかったばかりか、路線変更についてこられなかった一般のファンをも逃がしてしまい、やっぱりDISられまくるハマー。豪邸の維持費に貯金はみるみる減っていき、自身の経営する芸能事務所も倒産、3年後、94年に起死回生とリリースしたアルバムの際は迷走の末なんとギャングスタラッパーっぽくなって反撃。
そしてあまり知られていない事実ですが、実はなんとハマーは95年にデス・ロウレーベル入りを果たしています。残念ながらデス・ロウからのリリースはなかったものの、2Pacと一緒にレコーディングまでしていたのです。ハマーに歴史あり。
結局90年代初頭をピークに下降線をたどるも、かつての勢いを取り戻すことはできず、音楽シーンの表舞台からは姿を消すことに。BEEFは命がけの闘争だ!とはいえ、ここまで売れて、ここまで蹴落とされた例は彼が後にも先にも初めてでしょう。そんなハマーのその後に関する気になるトピックを紹介しましょう。数年前になぜか突如、
検索エンジンの開発に手を出しました。(現在閉鎖中)
目が離せないハマーの動向。今後とも、暖かく見守っていきたいものです。
おまけ
最近(といっても2010年)ひっそりとハマーとJay-Zとの間にBeefが発生していました。Jay-ZがKanye Westとの楽曲の中で「ハマーは破産したが俺はもっと慎重だ」とラップしたのに対し、激怒したハマー、ここぞとばかりにアンサー曲をYoutube上で発表。すわ大炎上か!?と一部(ごく一部)のtwitter民が色めきだった刹那、Jay-Zがこう発言。「ハマーの破産は周知の事実で、ネタにしたのは俺が初めてじゃないし、悪口ではない。
発表したばかりの俺の本“Decoded”の中ではハマーを賞賛している」
ハマーお前、あいつの本の宣伝に利用されただけじゃないか!!
さすがビジネスマンJay-Z。そしてさすがロケットブースター・ハマー。力の入ったアンサーソングを軽くいなされたハマーは1週間後、そっと終結宣言を出しました。