タランティーノ映画の裏設定「作品間リンク」まとめ

自由研究 | 03/13/2019
僕の心のヒーローであるクエンティン・タランティーノ。ヒップホップ的なサンプリング感覚や、あと僕の86年生まれという世代的なものも手伝って、本当に好きです。いまだにキャスト発表とかスチル公開とか、次回作に関する小出しの情報をいちいち楽しみにしてたりする、僕にとってはそういう存在です。

さて、彼の作品には様々な「遊び」が散りばめてありますが、その中でも最も有名なものに、「作品間のリンク」があります。マーベル映画のヒーローたちが共存する世界観を「マーベル・シネマティック・ユニバース」と表現しますが、最近ではタランティーノの一連のこの遊びも「タランティーノ・シネマティック・ユニバース」とか呼ばれているようです。




パルプ・フィクションのヴィンセント・ベガと、
レザボア・ドッグスのヴィック・ベガは兄弟

ヴィンセントベガ
ヴィックベガ
当初、パルプ・フィクションにおいてタランティーノは、マイケル・マドセンをヴィンセント・ベガとして起用するつもりでしたが、最終的にジョン・トラボルタを起用することになったため、二人のキャラクターを「兄弟」としてまとめたと言われています。なお、「ヴィック」の本名は「ヴィクター」。

『トゥルー・ロマンス』のリー・ドノヴィッツと、
『イングロリアス・バスターズ』のドニー・ドノヴィッツは親子

リー・ドノヴィッツ
ドニー・ドノヴィッツ
リー・ドノヴィッツは、ハリウッドの大物映画プロデューサーという設定で『トゥルー・ロマンス』に登場します。ドニー・ドノヴィッツはナチを殺すユダヤ人部隊、バスターズのメンバーで、通称「ユダヤの熊」。第二次大戦におけるユダヤ人特殊部隊というフィクションと、歴史的な経緯から現代でもハリウッドの業界人にはユダヤ系が多いという事実を結びつけているのかと推測されます。




『ジャンゴ 繋がれざる者』内のフランコ・ネロの台詞が
ダブルミーニングになってる

フランコネロ(アフター)
フランコネロ(ビフォア)
テーマから逸れてる気もしますが、これは最高に気の利いたジョークで、大変ヤラれました。
隣に座った黒人の「知能」を確かめるべく、ジェイミー・フォックス演じるジャンゴに、自身の名前のスペルを聞くフランコ・ネロ。ジャンゴは淀みなく「D-J-A-N-G-O。Dは発音しない」と答えます。それに対し、フランコ・ネロは「知ってる」と返答。フランコ・ネロといえば、マカロニウエスタン映画「続・荒野の用心棒」で、元祖「ジャンゴ」を演っていた人です。タランティーノも承知の上でキャスティングしてるわけですが、わざわざ「元祖」に名前を訊かせた上で「知ってる」という台詞を言わせるという、「世界一有名な“ジャンゴ”だもの、そら知ってるだろ」と突っ込まずにはいられない、タランティーノにしかできない洒落ですね。

ジャンゴとブルームヒルダの子孫は『黒いジャガー』のジョン・シャフト

シャフトの先祖
黒いジャガー、シャフト
タランティーノは自分のフィルモグラフィ内だけでなく、時として人さまの映画の登場人物にまで血縁関係を持たせます。もちろんリスペクトと愛を込めて。「ジャンゴ 繋がれざる者」の基本コンセプトは「マカロニウエスタン+ブラックスプロイテーション」でした。作中で明かされたブルームヒルダの本名は、ブルームヒルダ・フォン・シャフト。アイザック・ヘイズの主題歌でおなじみ、ブラックスプロイテーションの名作「黒いジャガー」の主人公は、ジョン・シャフト。年代的に親子ではありませんが、子孫という含みなのでしょう。あの二人はその後きちんと愛を育んだのかと思うと、またさらにグッとくるところです。




『パルプ・フィクション』に出てきたクーンツ大尉の祖先は
『ジャンゴ』に名前だけ出てきた賞金首

シャフトの先祖
黒いジャガー、シャフト
これ、日本語の字幕だとジャンゴは「クーンズ」で、パルプフィクションは「クーンツ」なんですね。クレイジー・クレイグ・クーンズは、ジャンゴが狙撃したスミッティ・バコールの一味として名前が登場します。

『キルビル』の「夜這い窓口ドクター」バックと、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のセスが一字一句同じ台詞を言う

シャフトの先祖
黒いジャガー、シャフト
海外のファンサイトで知りました。これは気づきませんでした。台詞系は英語が母国語じゃないと限界があります。台詞は「Are we absolutely clear on rule number one? (ルール1は完全に理解したか?)」。日本語字幕だと若干違います。

同じ保安官の親子が何度も登場する

保安官1
デス・プルーフ

保安官1
キル・ビル

保安官1
フロム・ダスク・ティル・ドーン
もはや名物。父のエドガー・マックグロウ、息子のアール・マックグロウです。お前、フロムダスクティルドーンで一回死んだだろ!




『パルプ・フィクション』でミアが言っていた、自身の出演したドラマが『キル・ビル』

ミア・ウォレス
ミアは、「ドラマのパイロット版に出たことがある」とヴィンセントに話していますが、その作品が『キル・ビル』であるという説ですね。ちなみにパルプ・フィクション内では「フォックス・フォース・ファイブ」というタイトルになっていて、「ブロンドのサマセットがリーダー」「日本娘はカンフーのプロ」「黒人娘は爆薬のエキスパート」「フランス娘はセックス専門」、そしてミア・ウォレスの専門は「ナイフ」と発言しています。キャラ設定はキル・ビルの内容とは異なりますが、その辺も含めてのパイロット版。
ブロンドのリーダー
▲ブロンドのリーダー

日本娘
▲日本娘

黒人娘
▲黒人娘

フランス娘
▲フランス娘

ナイフ使い
▲そしてナイフ使い

『キル・ビルvol.2』でブライドが生き埋めにされたのは、ドクター・キング・シュルツの奥さんの墓

ポーラ・シュルツの墓
キング・シュルツ
という噂です。墓石を見ると、1823〜1873年とあります。『ジャンゴ』は1858年〜1859年あたりが舞台なので、十分にあり得る話。しかし『キル・ビルvol.2』が2004年公開、『ジャンゴ』が2012年の公開なので、その間には8年ものタイムラグがありながら、こんな伏線を張っていたことに驚かされます。こじつけただけかもしれないけど。




『パルプ・フィクション』のジュールスと
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のセス・ゲッコーが
同じハンバーガーを食べている

栄養満点の朝飯の代表じゃねえか
ビッグカフナバーガー
パルプフィクションの最初の方で、若者たちを「なんのハンバーガーだ?マクドナルドか?ウェンディーズか?」と問い詰める名シーン。そこに登場するのがビッグ・カフナ・バーガー。そしてそれは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』にもちらっと登場していました。セスが買ってきた紙袋に、ビッグ・カフナ・バーガーのロゴマークがあります。

『レザボア・ドッグス』のMr.ホワイトが、
『トゥルー・ロマンス』のアラバマと思しき人の話をする

アラバマ・ウィットマン
ミスターホワイト
Mr.ホワイトが「アラバマ」という女性について話しています。アラバマとは「4回仕事をして」おり、彼女は「今はフランクと組んでいる」とのこと。

『レザボア・ドッグス』でヴィック・ベガについてた保護観察官は、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に出てきた変な刑事の兄弟

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ヴィックについてた保護観察官は「シーモア・スキャグネティ」。その兄弟が、トゥルー・ロマンスに出てきた変態っぽい刑事の「ジャック・スキャグネティ」ではないか、とファンの間ではささやかれています。

『イングロリアス・バスターズ』のヒコックス中尉の祖父は『ジャンゴ』に出てきたピート・ヒコックス

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これについては、ティム・ロス自身が「彼はグレイト・グレイト・グレイト・グランドファザー」と発言しているので、間違いなさそうです。

最後は勿論これ。
レッドアップルという架空のタバコが至る所に登場


レッドアップル
プラネット・テラー

レッドアップル
フォー・ルームス

レッドアップル
ロニーとミッシェルの場合

レッドアップル
パルプ・フィクション(この他数カ所)

レッドアップル
キル・ビル

レッドアップル
レッドアップル
ジャンゴ 繋がれざる者
レッドアップル
イングロリアス・バスターズのプロットとして存在していたが、使われなかったという1940年代バージョン

タランティーノは、パルプ・フィクションのプロットについてのインタビューで、「元々三文小説のスピンオフが好きで、パルプ・フィクションの脚本にはそれが影響している」と発言しています。彼はこの「作品をリンクさせる遊び」を通じて、いわば全ての作品を、全ての作品のスピンオフにしてしまっていると言えます。今年は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」も公開されるので楽しみに待ちつつ、一方ではそれ含めあと2作で引退なんていう話もあったりするので複雑ですが、宮崎駿みたいにカジュアルに前言撤回しながら作り続けてほしいなーと思ってます。

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